大画面は色あせない魅力Apple iPad Pro 12.9インチ 第5世代
あまりの画面の広さ、大きさに気後れしてしまう気持ちもある。どうしよう、コイツを持ち運べるバッグはどれだろうと運用スタイルが気になってくる。しかし「主に自宅で使おう」と思い立ったら、あれ、「iPad Pro 12.9インチ 第5世代」は楽しむも作るも最高のエンタメタブレットじゃないかと気がついた。
明るい画面、鮮明なディスプレイ
燃えるような、際立つ鮮烈な赤。生き生きとしたリアリティを感じさせる緑。重層な色気を漂わせている青。そして深く、どこまでも深く沈み込んだかのような黒。ひと目ぼれとはこのことでしょうか。、「iPad Pro 12.9インチ 第5世代」(以下iPad Pro 12.9)のディスプレイの美しさにほぅ、っと思わずため息をついてしまいました。まるで有機ELパネルかと思えるほどのハイクオリティな色彩を描く「Liquid Retina XDR」に圧倒されました。
ディスプレイの性能を語るうえで解像度は最重要視されますが、ほかに色の再現性の高さも大事なポイント。バックライトが無点灯な漆黒から、LEDがともった色のある状態まで表示の幅がきわめて多彩なiPad Pro 12.9。YouTubeやNetflixのHDR動画を再生すると、改めてハッとします。薄いタブレットだというのに色の厚みの表現がすごい。映画をディレクションした監督は、こんなにも鮮やかな世界観をみんなに見せたかったのかと鳥肌が立ってきました。
そして。ああ。ゲームがヤバい。
絶景だらけの「風ノ旅ビト」や「Sky 星を紡ぐ子どもたち」、手に汗握る対戦プレイの「Call of Duty®: Mobile」や「PUBG MOBILE」、みずみずしい空気感が伝わってくるような「アビスリウム」「ねこより」などが、美しいディスプレイを持つiPad Pro 12.9だからこそ、モバイルゲームとは思えないほど美しく、高い没入感で楽しめるのです。

リビングでもキッチンでもベッドルームでもベランダでも自由に持っていけるし、バッテリー駆動でコンセントもいらない。これ、個人用としてもし1つディスプレイを選ぶとしたら、世界最高峰の存在ではないだろうか。そう感じてきました。
M1チップが支えるクリエイティブワーク
iPad Pro 12.9を語るうえで外せないのがプロセッサーです。採用された「M1チップ」は、そもそもMacBook Proなどで使われたもの。それだけ高性能なプロセッサーです。
ただ、MacBook用のアプリが使えるわけじゃありません。また現時点では5GB以上のメモリーが使えないというiPadOS側の制限があります。
それでもクリエイティブアプリを使ったときのレスポンスは、無印iPadやiPad Air、iPad miniとは違います。大排気量のエンジンを積んだ車でクルージングするかのような快適さがあります。

iPhoneで撮った4K60fpsの動画ファイルを編集するときも、ハイビットレートからくるデータ量の多さにもかかわらずスムース。特に「Adobe Premiere Rush」を使ったときの、ドラッグ&ドロップを駆使する編集時のもたつきのなさに、思わず「楽だなあ」という気持ちで満たされます。一眼カメラのRAWデータ現像だってスピーディー。そして12.9インチという大画面が、細かなコントローラが並ぶクリエイティブアプリの操作性の高さにつながっています。Apple Pencilがあれば巨大な画面がそのまま液タブ代わりに使えるし、タブレット界最強の存在といってもいいでしょう。
ノートPCと違って持ち運びにくい
映像を見る。ゲームで遊ぶ。電子書籍を読む。作品を作る。受動的な楽しみ方も、能動的な使いこなしも問題なし。そんなiPad Pro 12.9ですが、1つだけ気になる点があります。
それは、大きさ。
見る、遊ぶ、読む、作るといった作業において効果的だった12.9インチという大画面ゆえに、デバイスそのものの面積は13インチ級のモバイルPCクラス。しかしディスプレイが常にむき出しになっていることから、いざアクティブに持ち歩こうとすると、あまりのガラス面の面積の広さに恐れの気持ちが生まれてきます。「ラフに扱っちゃいけない」というストレスも感じます。

また大きく、重いことから、手持ちしにくいんですよね。
純正カバーをはじめ、ケースやカバーアクセサリーは潤沢に用意されています。しかし、いろいろオプションをつけていくと、積み重なっていく重さに気後れしてくる。常に車で移動する人ならいいと思うのですが、電車移動が中心だと、ストレスを感じながら持ち運ぶくらいならこのサイズでなくていいかも。と、感じてしまうんですね。
画面保護性能が高い「12.9インチiPad Pro(第5世代)用 Magic Keyboard」を装着してノートPCのように使えばいい、という声もあります。しかし実際に13インチ級のノートPCと比べると、キーボードのタッチが気になって、持ち出すなら13インチ級のノートPCのほうがいいと感じるんですよね。
主に自宅で使うと幸せにまっしぐら
今回、実は「iPad Pro 11インチ 第3世代」(以下iPad Pro 11)と同時に使ってみました。画面サイズは数字にすると1.9インチの差。ボディの見た目はふたまわりくらいのサイズ差があり、改めてiPad Pro 12.9は巨大なタブレットだという印象が強くなります。そしてスタンダードなサイズなはずのiPad Pro 11がコンパクトに思えてきます。やっぱり持ち歩くならiPad Pro 11がいいかもと思えてきます。
だからこそiPad Pro 12.9の良さは、自宅で使ったときのほかのタブレットでは得られにくい快適さに尽きると言いたい! 頻繁には持ち歩かないという選択肢にたどり着けたなら、現世代においてパーフェクトなタブレットですから。

また、世界的に見ても、12.9インチという巨大なディスプレイを持つタブレットはまれな存在。来年、再来年と新しいモデルが登場したとしても、大型タブレットとしての魅力は決して失われません。
新しい世代が登場しても長くつきあえる1台、といえるでしょうね。
文:武者良太 写真:文田信基(fort)