シンプル・イズ・ベストTRANS MOBILLY E-BASIC (92213)

電動自転車 2022/11/24
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シンプル・イズ・ベストTRANS MOBILLY E-BASIC (92213)

吉本司自転車ジャーナリスト

スポーツ自転車歴38年のベテランであり、フリーの自転車ジャーナリスト。月刊自転車専門誌『サイクルスポーツ』での編集長経験を持つ。ロードバイクからeバイクまで車種を問わず機材、市場動向、レースに至るまで幅広い知見を持つ。これまで試乗した自転車は数百台。自費購入した自転車は85台にものぼる。

高性能化にともない価格も上昇傾向の電動アシスト自転車。でも日常の足として使うなら、安くて心おきなく乗れる1台が欲しい。それならシンプル機能で価格を抑えたTRANS MOBILLY「E-BASIC (92213) + 専用充電器」です。

“単機能”な電動アシスト自転車

我々はいろいろな道具を利用しながら日々を過ごしています。スマホ、洗濯機、電子レンジ・オーブンレンジなどなど。でも、本当にそれらを使いこなしているかというと、筆者に至っては、甚だ怪しいのです。

たとえば電子レンジ・オーブンレンジ。料理のレパートリーが広がる、時短ができるからと、多機能なオーブンレンジを購入したことがありました。しかし、グリル機能を使って料理をしたのは最初の数か月。気が付けば冷凍したご飯、生野菜を温めるばかり。結局キッチンのスペースもとるので、引っ越しを機に“単機能電子レンジ”と呼ばれる、温める機能だけのタイプに買い換えることになったのです。

ちなみに本稿は電動アシスト自転車の話ですが、いきなり私的な電子レンジの話になったのは、このTRANS MOBILLY「E-BASIC (92213) + 専用充電器(以下E-BASIC)」に触れてみて、“単機能電子レンジ”の存在を思い出したからなのです。

現在、電動アシスト自転車の製品群は二極化していると筆者は考えます。特に国内3強(ヤマハ、ブリヂストン、パナソニック)の製品では、モード切り替えのある賢いアシスト性能、1充電あたりの航続距離の延長といった高い付加価値により価格が高くなっています。

それに対するのが、それ以外のメーカーの製品で見られる低価格化。国内3強に機能・性能では及ばないものの、価格を抑えたコスパのよさで勝負をしています。

7万円を下回る価格(2022年11月24日時点)となるE-BASICは、もちろん後者です。20インチの小径車輪と折り畳み機能をもつコンパクトな車体には、後輪駆動式の電動アシストユニットと5Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載して、1充電あたりの航続距離は40km。特徴的なのは駆動機能で、変速もなければ、アシスト力の切り替えもなく、造りは至ってシンプルです。冒頭の単機能電子レンジのたとえを借りてこのコンパクトな車体を表現するのなら、“単機能電動アシスト自転車”とでもいえる存在なのです。

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アシスト力は十分パワフル

アシスト力の切り替えや変速機能を備える国産3強ブランドのような、いわゆる“多機能電動アシスト自転車”を見慣れていると、E-BASICのシンプルな機能には、一見物足りなさを覚えます。しかし、街中を走る電動アシスト自転車利用の実情を見ていると「これで十分かも」と思えます。

実際に街中を走る“多機能電動アシスト自転車”を見ていると、上り坂でアシストモードや変速を変えずに、そのままペダルをこいでいる人が意外に多い。それだとバッテリーの消費は増えるし、坂道モードを選んだ時よりも推進力は鈍くなります。それでもアシスト力は発揮されているし、普通の自転車よりもはるかに楽に坂を上っていけますよね。

そこで「アシストモードの切り替えも変速機もいらないのでは? そのほうが価格も抑えられるのでメリットが多い」。そんな割り切ったコンセプトから生まれたのが、このE-BASICというわけです。

実際にまたがってみると、小径車特有の出足の軽さにも助けられて発進はとてもパワフル。後輪を「ギューン」と押されているかのように強く進みます。そのアシスト力は、一般的な3段階切り替え式自転車の“坂道(強)モード”に迫るほどのレベルです。

それでいて平地での巡航走行におけるアシスト感は、いかにも「アシストしています」というよりは、普通の自転車をこいでいるかのような自然なもの。それでもアシストはちゃんと効いているので、普通の自転車よりは楽なので性能は必要十分です。

ペダルに力を加えた際のアシスト力の発生はタイムラグも少なくリニアな部類でしょう。ただし強くアシストされた後にペダルをこぐ力を緩めると、モーターで内部抵抗が発生しているためか一瞬、自転車の進みが鈍くなるのは少々気になるところです。したがって上り坂に差しかかり、平地を走っている時と同じように軽い力でペダルをこぐとE-BASICの魅力であるパワフルなアシスト力が発揮されにくく、少々ぎこちない走りとなることもあります。

それを避けるためには、上り坂に入ったら平地よりも少し強めにペダルを踏み続けること。そうすれば大きなアシスト力が途切れることなく発揮されて、スムーズに駆け上ることができます(激坂ではペダルを強く踏み続けることを、より意識したほうがよい)。とはいえこうした動作は強く意識する必要はありません。上りや平地で速度が落ちてきたと感じたら、速度を維持するために、飽くまで直感的にペダルを強く踏めばよいだけです。なので、ストレスと感じることはあまりないでしょう。

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多機能高価格モデルへのアンチテーゼ

筆者は本企画をはじめ、これまでいろいろな電動アシスト自転車を試乗してきました。アシスト力の切り替えや変速機能を装備した“多機能”なモデルは、体力の消耗とバッテリーの消費を抑えることができるので、快適に走る距離を伸ばすことが可能です。また、荷物を多く積んだり、子供を乗せたりする“運搬”という場面や、特に坂が多い土地では優位性を発揮しやすいでしょう。

しかし今回E-BASICで都市部を中心に駆け回ってみると、“単機能”だからといって不都合を感じるような場面はほとんどありませんでした。アシストモードを切り替えたり、あえて変速したりせずに「地形の変化に応じてペダルを踏む力を変える」だけで乗りこなすことができる直感的な駆動性能は、機械操作が苦手な人やそれが面倒な人にとっては心地良いと感じられることでしょう。

重たい荷物がなく、都市部の短距離(半径5km以内/ちなみに5kmは皇居の外周くらい)の移動手段なら、この単機能なE-BASICの性能で十分だと筆者は感じました。

そして小径車ゆえのコンパクトな車体は、駐輪時をはじめとする街中での取り回しにもすぐれていますし、信号の多い都市部の道路でも機敏に走ってくれます。40kmという電動アシスト距離もシティユースであれば問題のないレベルでしょう。

自転車的な装備についてはフロントに荷台があるのみと至ってシンプル。ライトもなければカギも標準装備されていないのは、評価の分かれるところですが、できるだけ価格を抑える狙いからすればそれも納得できます。また、電動アシストの機能を含めてシンプルな構造は、故障の可能性やメンテナンスの場所や頻度も減るので、扱いやすさという面においても利点となります。

ただ、折り畳み部分の造りが粗く、また、フロントブレーキのグレードが低めなのが少々気になります。車体価格を抑えるために各部でスチール素材が多用されているので、このあたりのボルト類の締め込みや注油などには気を払って定期的なメンテナンスを心がけるべきでしょう。もちろん車載時や駐輪時など、折り畳めること自体の利便性はいうまでもありません。

機能を絞ることで価格を抑えた“単機能電動アシスト自転車”というE-BASICのコンセプトは、“シンプル・イズ・ベスト”ともいえるものです。単に安い電動アシスト自転車を望むという理由だけでなく、都市部における日常の足として利用を考えるのならば想像以上にマッチする人は多いはずです。E-BASICは、多機能高価格な電動アシスト自転車に対するアンチテーゼのような1台なのかもしれません。価格.com

文:吉本司 写真:高柳 健
編集:宮崎正行 モデル:KOTA

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TRANS MOBILLY E-BASIC (92213) + 専用充電器

タイプ: 小径・折りたたみ
タイヤサイズ: 20x1.75
充電時間: 3 時間
全長: 1500 mm
全幅: 550 mm
カラーバリエーション: White / Navy

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