2023年3月7日
借入
カードローンの総量規制とは
緊急時にお金を借りられるカードローンですが、実は「総量規制」によって、個人が借入れできる金額の上限が決められているのをご存じでしょうか。ここでは、カードローンの総量規制について解説します。
総量規制とは
総量規制とは、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1までに制限される、という制度です。
借入残高が年収の3分の1を超える場合に新たな借入れができなくなるというのは、たとえば年収300万円の方は、貸金業者から100万円までしか借入れできないということです。
対象となる金額は借入残高の「総額」のため、A社から50万円、B社から50万円借入れをしている場合、借入残高は総額100万円となり、新たな借入れはできなくなります。貸金業者とは、銀行・信金・信組・労金などを含まない消費者金融や信販会社などを指します。
| 業種 | 企業例 | |
|---|---|---|
| 総量規制対象 | 消費者金融、クレジットカード会社、信販会社など | アコム、プロミス、アイフル、三菱UFJニコス、オリエントコーポレーション、クレディセゾンなど |
| 総量規制対象外 | 銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協、漁協、保険会社、質屋など | 三菱UFJ銀行、京都中央信用金庫、中央労働金庫、日本生命保険など |
銀行カードローンも総量規制される?!〜昨今の金融庁や業界団体の動き
総量規制をはじめとする貸金業法の改正(2010年6月に完全施行)により、多重債務で苦しむ人の数は大きく減りました。2006年のピーク時には171万人もいた5件以上もの借金を抱える多重債務者の数は、2016年には9万人にまで減少し、ピーク時の5%ほどになっています。その一方で近年、総量規制の対象外の銀行カードローンによる融資が増えていることが問題視され始めました。これを受けて、日本弁護士連合会は、銀行カードローンも貸金業者と同様に利用限度額を法律で規制すべきという意見書を国に提出しました。一般社団法人全国銀行協会では、貸しすぎの防止や過度な広告などを控えるよう指針を定めるなど、今後の動きが注目されています。
総量規制には除外と例外がある
総量規制は返済能力以上の多額の借入れを防止する制度ですが、どうしてもまとまったお金が必要になる場面を考慮し、総量規制には「除外」または「例外」があります。
「除外」は総量規制の対象にならない貸付けのこと
除外となる貸付けは、総量規制の対象とならない取引を指します。除外となる貸付残高は、総量規制の貸付残高には含まれません。
たとえば、住宅ローンは総量規制の除外に当たります。仮に年収が300万円で3,000万円の住宅ローンがあったとしても、カードローンは利用できます。
「例外」であれば年収の3分の1を超えても借入れできる制度
例外は、年収の3分の1を超えた分に対して返済能力があると判断された場合、例外的に借入れできる制度です。
たとえば、年収300万円の人がすでに100万円借入れしていたとして、緊急で医療費にあと30万円必要という場合は「例外」として借入れできる可能性があります。
| 「除外」となる借入用途 | 「例外」となる借入用途 |
|---|---|
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総量規制に関するQ&A
- Q 銀行からの借入れも合わせると年収の3分の1を超えてしまうのですが、これ以上の借入れはできないのでしょうか?
- A銀行からの借入れと貸金業者からの借入れは分けて考えるため、いずれかの借入れが年収の3分の1を超えていなければ借入れできる可能性があります。
- Q 連帯保証人がいれば、年収の3分の1を超えた借入れはできますか?
- Aできません。連帯保証人の年収や財産は考慮されません。
- Q クレジットカードのショッピングも総量規制の対象になりますか?
- Aショッピングは総量規制の対象になりません。ただし、クレジットカードのキャッシングは総量規制の対象です。
- Q 借入残高が「年収の3分の1」を超えているかどうか、貸金業者はどうやって判断するのですか?
- A貸金業者は、指定信用情報機関の情報を利用して借り手の借入残高を把握します。貸金業者には、信用情報機関への加入が義務づけられており、信用情報機関同士で残高情報等の情報が共有されています。
まとめ
カードローンで借入れできるお金は、年収の3分の1までと法律で決められています。しかし、実際に年収の3分の1も借入れすると無理な返済計画になって返せなくなってしまうかもしれません。カードローンを利用するときは、無理なく返済できるように返済計画を立ててから利用しましょう。
銀行カードローンは総量規制の対象外です。ただし、銀行は利用者が借り過ぎてしまわないよう年収の3分の1以上は貸し付けないように貸付額を調整します。カードローンで年収の3分の1以上の借入れはできないと考えておくとよいでしょう。
東京フロンティア基金法律事務所(第二東京弁護士会)所属。債務整理・一般民事(消費者問題・家事事件・労働事件)・刑事事件など幅広く担当。司法過疎地域解消に向けた活動にも取り組んでいる。