2011年、生活家電カテゴリのプロダクト大賞に輝いたのは、東芝の冷蔵庫「置けちゃうスリム GR-D43N」となった。これまでの価格.comプロダクトアワードで冷蔵庫がプロダクト大賞に選出されるのは初めてであり、ある意味で意義深い受賞となった。
まず本製品の評価を分析する前に、2011年という年の冷蔵庫市場を巡るトレンドについて説明しておく必要があるだろう。冷蔵庫という家電製品は、なくてはならない必須の生活家電であるが、それゆえに、技術進化の早いパソコンやテレビなどのデジタル製品と比べると、あまり進化していないのではないか?という雰囲気がある。冷蔵庫を購入する際にも、スペックを細かく見比べて購入するということはそれほどないだろうし、購入するタイミングも「壊れたから」「引っ越すついでに」というようなものが多いだろう。つまり、冷蔵庫という製品は、家庭における重要性とは裏腹に、これまであまり真面目に製品選びがなされてこなかったジャンルの1つなのである。
その流れが今少しずつ変わりつつある。そのきっかけはやはり2011年3月に起こった東日本大震災だ。この震災と、それに伴う原発事故の影響で、関東地方を中心とする広い地域が停電の危機に見舞われた。誰もが電力需要の危機を感じ、その結果、ちょっとした「節電ブーム」のようなものが起こった。少しでも節電に協力できる家電製品に買い換えようという動きが、これまで以上に強く起こったのである。こうした流れの中で、特に注目を集めた家電製品の1つが冷蔵庫だったのだ。冷蔵庫は常時電源を入れておく家電製品であるだけに、家庭における電力使用の大きな部分を占める。しかも、「使わない」という選択肢はないだけに、より省電力な製品が求められたのだ。実際、価格.comの「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリのアクセス数も、3月くらいを境に大幅に上昇し、これまでにないほどの賑わいを見せた。
こうした「省電力」に伴うユーザーニーズの中で多くのユーザーから選ばれ、さらに高い評価を得たのが、この「置けちゃうスリム GR-D43N」なのだ。省電力性に関していえば、2010年省エネ達成率で170%を達成しており、年間消費電力量も「300KWh/年」という省エネ設計だ。もちろん、ほかにもこのレベルの省エネ設計を持った冷蔵庫は存在するが、本機のよさはそれだけではない。消費電力も含めたトータルでのパッケージングがすばらしかったのだ。
まず、製品名の「置けちゃうスリム」に表されるスリムなボディ設計がある。本機は427Lの庫内容量を持つ中型クラスの製品だが、ボディがコンパクトにまとまっており、特に幅が600mm、奥行きが682mmとスリムに納められているので、マンションなどの小さめのキッチンでもすっきり収納できる。でいながら庫内容量は427Lと、ファミリーでも使えるたっぷり容量を実現。まずはこのコンパクトさが評価された。また、比較的よく使う「野菜室」が真ん中に配置されている点もポイントが高い。実際に使ってみると、この位置が非常に使いやすいと感じるユーザーが多いようで、製氷室などよりも上に配置したことで使い勝手がいいと評価されている。
さらにほとんどのユーザーが高く評価しているのが「静音性」だ。メーカー側ではそれほど大きくうたってはいないが、「動いてないみたいに静かです。少し不安になり、本体に耳をあて動作を確認したくらいです」「本当に静か!自動製氷の出来上がった氷の音しか聞こえない」など、この点での満足度は非常に高い。特に目立った機能はないものの、「サイズ」の項目で5.00、「静音性」の項目で4.90、「機能」「使いやすさ」で4.83と、「デザイン」以外の点ではいずれも高評価となっている。さらに、ライバル製品と比べた場合の価格の安さもあり(一概には言えないがライバル製品よりも1万円ほど安い)、コストパフォーマンスの高さという意味でも高い人気を勝ち得たと言っていいだろう。
注:文中のレビュー評価は、2011年1年間での評価になります。
東芝ホームアプライアンス
株式会社
冷蔵庫事業部
山村 俊仁さん
-- 今回は受賞おめでとうございます。まずは率直な感想をおうかがいできますか?
2011年は、家電エコポイント制度の終息もあり、国内冷蔵庫市場は非常に厳しい年になりました。また、東日本大震災、タイでの洪水被害等、自然災害にも大きく影響を受けた1年でもありました。そんな中、ユーザー視点でもっとも支持された製品という「プロダクトアワード」、生活家電カテゴリ部門での大賞という栄誉をいただき、大変光栄に思っております。普及率の高い大型家電商品である冷蔵庫が大賞に選出されるのも、まさに時代を象徴したものであると思います。これも、当社冷蔵庫をお使いいただいているユーザーの皆様、また冷蔵庫の製造・販売に携わっていただいている方々のお力添えによるものと、心より御礼申し上げます。
-- 本製品を開発するにあたってこだわったポイントを教えてください。
当社は、省エネ性能の向上は基より「使いやすさ」にもこだわった冷蔵庫づくりを心がけています。そのひとつが評価の高い「まんなか野菜レイアウト」です。
冷蔵庫は食品を保存するための家電ですので、食品の出し入れという機能が、商品の使いやすさのポイントになります。JIS規格による年間消費電力量の測定においても、冷蔵室>野菜室>冷凍室 の順で開閉回数が多いという条件が設定されています。なかでも、野菜室に収納される野菜には、重量の大きいものが少なくありません。置けちゃうスリム「GR-D43N」の「まんなか野菜レイアウト」は、食事の支度やお買い物帰り等、野菜を出し入れする度に屈む必要がないので腰への負担が少ない、東芝だけの特長になっています。
-- ユーザーから高く評価されたと思われるポイントはどこにあったとお考えですか?
店頭やカタログでご確認いただける「まんなか野菜レイアウト」やコンパクトな製品サイズ、という特長に加え、置けちゃうスリム「GR-D43N」は価格を抑えた普及ゾーンに位置する冷蔵庫ながら、上位機種「VEGETAシリーズ」と同様のツイン冷却システムを採用しています。
東芝独自のツイン冷却システムは、冷却効率にすぐれると共に、冷蔵室と野菜室を常に高湿度に保つことができ、食品を長持ちさせるという特長を持っています。この特長は、店頭ではなかなか実感していただけないものですが、ネットという媒体を通してお客様からお客様へ伝わることによって評価いただき、今回の大賞という栄誉に結びついたのだと思います。
-- 価格.comユーザーの評価(上記分析)に関しては、どうお感じでしょうか?
冷蔵庫という家電の特性、購入動機や購入の基準などのご推察については、納得、共感できるポイントが多々ございました。冷蔵庫にとって、省エネという機能は、価格・サイズと同様に重要視されることが多く、業界全体での取り組みもあり、容量400L以上のクラスでは、10年前の冷蔵庫に比べると半分以下の電気代になっております。
これまでは、引越し等の他では故障や不調を機に買い換えることが多かった冷蔵庫ですが、コメントでもご指摘いただいたように、東日本大震災後の電力供給量減少という状況下においては、古くなった冷蔵庫を買い換えることで電力需要の削減に貢献したい、と考えられたお客様が増えているようです。
このような買い替え需要の場合、比較的ゆっくりと時間をかけて商品をお調べになることができたのでは、と思います。その結果として、置けちゃうスリム「GR-D43N」は、数値として比較しやすい省エネ機能に加え、さまざまな使いやすい特性についてもネットで確認いただいたうえで、コストパフォーマンスの高さを含め、ご評価いただけたものと思います。
-- 最後に、価格.comのユーザーへひと言コメントをお願いします。
東芝冷蔵庫 置けちゃうスリム「GR-D43N」に高い評価をいただきありがとうございます。震災に伴う電力供給の逼迫、というこれまでにない状況はこれからも数年間は続くと思われます。24時間365日、常時電源を入れておかなければならない冷蔵庫だからこそ、省エネ・節電効果の高い、お客様の立場に立った使いやすい商品を開発してまいりますので、今後ともよろしくお願いします。
ユーザーの皆様の気付きや厳しいご評価をいただくことによって、さらにすぐれた商品を市場に送り出せると思っています。今後もたくさんの忌憚のないご意見をお寄せいただければと思います。どうもありがとうございました。