洗濯機・冷蔵庫のような大型家電から、美容器具や電動歯ブラシのような小型家電まで、さまざまなカテゴリが存在する「生活家電部門」では、ダイキンの空気清浄機「光クリエール ACM75K」が大賞に輝いた。空気清浄機では、2006年のプロダクトアワードでも三菱電機の「プラズマッハ MA-805」が大賞に選出されており、価格.com内でも比較的人気のカテゴリーである。しかし、2009年の場合は、「新型インフルエンザ」の流行によって、3年前とは、空気清浄機を取り巻く状況自体がかなり変わっていたのだ。
従来の空気清浄機は、家の中のハウスダストやニオイの除去に主眼が置かれており、特に2〜3月の時期に飛散が活発化するスギ花粉によって引き起こされる「花粉症(花粉アレルギー)」への予防措置として主に使われてきた。このため、空気清浄機は例年2〜3月の時期には売れるが、その後は夏にかけて徐々に売れなくなっていく商品というイメージが強かった。しかし2009年は、花粉の飛散も終わりかけた4月頃に新型インフルエンザの世界的流行がアナウンスされたため、例年落ちるはずの空気清浄機の需要が一定水準で下げ止まり、夏以降は上昇に転ずるなど、例年にない動きを見せたのである。
このような状況下で一躍注目を集めたのが、「プラズマクラスター」や「ナノイーイオン」などの「ウイルス対策機能」を搭載した空気清浄機である。こうした製品は一様に「ウイルス除去」をうたい、それまで空気清浄機にあまり関心を示していなかった層に対しても強くアピールし、大きな成功を収めた。その結果、2009年、空気清浄機のトレンドは、これまでの「ハウスダスト/ニオイの除去」から、「ウイルス対策」の機能が重視されるようになっていったのである。
そんな中登場したダイキンの「光クリエール ACM75K」も、「ウイルス除去」を最大の売り文句として大きな注目を集めたが、その構造自体は、上述のイオン系製品とは大きく異なっている。本製品は、イオンを空気中に放出する方式ではなく、従来型の「空気を吸い込んでフィルターでろ過する」という過程の中で、ダイキン独自の「高速ストリーマ技術」でウイルスを分解・除去するという構造を取っている。どちらの方法がよりウイルスに対して効果的なのかは不明だが、ダイキンの場合、従来の空気清浄機作りの延長線上にあるという点ではオーソドックスな製品だ。もともとダイキンの空気清浄機は、風量の強さでは定評があるため、「ハウスダスト/ニオイの除去」という目的では非常に有効だったが、そこに強力なウイルス除去機能が加わったことで(従来から技術は搭載されていた)、トータルでの空気清浄性能が非常に高まったのである。
実際のユーザーレビューでも、本製品を購入したユーザーは、ウイルス対策だけでなく、ハウスダストやニオイへの対策を重視している割合が高く、そのほとんどが、トータルの空気清浄機能に高い評価を与えている。ポイントとなるのは最大7.5m3/分という強力な風量と、ダイキン独自の静電集塵フィルター、そしてプラズマ放電によってウイルスや細菌、アレル物質などを分解・除去する「高速ストリーマ技術」だ。この3つが有機的に絡み合い、吸い込んだ空気を強力に清浄化するのだが、その効果は、レビュワー全員が満点の5点をつけているという結果からも見て取れる。レビューの内容も「アレルギーやぜんそくが治った」「ホコリが目に見えて少なくなった」「ペットのニオイがしなくなった」など、かなり実際的なものばかりで、ウイルス対策だけでなく、総合的な空気清浄機としての機能がすぐれていることを示す結果だ。イオン放出型のウイルス対策機能を持つ空気清浄機も確かに注目度は非常に高かったが、トータルでの空気清浄機能が高いダイキンの「光クリエール ACM75K」のほうが、最終的にはより高いユーザー満足度を得たというところだろう。
注:文中のレビュー評価は、2009年1年間での評価になります。
ダイキン工業
空調生産本部
商品開発グループ
主任技師
岡本誉士夫さん(左)
空気グループ
村井雄一さん(右)
-- 2009年は新型インフルエンザの世界的流行(パンデミック)などもあって、空気清浄機は非常に高い注目を集めました。そんな中でも、いろいろなウイルス対策機能をうたった他メーカーの製品を抑えて、ダイキンの空気清浄機がもっとも評価されたという背景には、やはり空気清浄機としての基本性能がすぐれていたことがあると思います。
確かに2009年はインフルエンザの対応ということがフォーカスされており、私たちも5月、8月と、インフルエンザウイルス対策の技術的な評価をさせていただきました。ただ、私たちの製品は元々「大風量・静音」といった基本性能にこだわり続けてきていますし、電気集塵機やプリーツフィルター、光触媒のアパタイトフィルターといったさまざまな機能は、これまでもずっと訴求し続けてきた機能です。たまたま2009年は、新型インフルエンザへの対策機能で空気清浄機全体が注目されましたが、そこだけではない空気清浄機としての基本性能がユーザーの皆さんに評価されたというのは、私たちとしても非常にうれしいところです。
ダイキンは、もともと業務用の製品が多いためか、これまで製品の訴求が今ひとつできていなかったという反省がありました。そこで2009年は、これまであまりやってこなかったテレビCMも打ったりしましたが、そこで何となく製品に対する認知も上がってきたのかなと思っています。業界全体でも例年の1.5倍以上に出荷台数が伸びていますし、私たちもなかなか供給が追いつかないほど、空気清浄機の需要は高まっています。もちろんそのきっかけとなったのは新型インフルエンザの流行ですが、ダイキンの製品が得意とする、空気清浄機の基本性能、たとえば「脱臭機能」や「アレルゲンの除去」などの機能に関しては、今後も訴求していきたいと考えています。
-- 新型インフルエンザ対策ということで、多くの他メーカーが「イオン放出機能」を搭載し話題を集めました。そんな中、ダイキンだけがずっと「電気集塵」や「ストリーマ」といった独自の技術を貫いていたのが印象的でした。
私たちの実験結果、そして現在の判断としては、フィルターで細菌やウイルスをしっかりつかまえて、そのうえで効率的にプラズマを照射して殺してしまう、というのが、ウイルス除去に関してももっとも効果のある方法だと思っています。そこはずっとこだわっているところですね。
あと、もう1つのこだわりは「電気集塵」です。ダイキンが、この電気集塵を搭載した製品を最初に出したのは1999年ですが、それ以来、ずっとこの方式にこだわっています。また、「光クリエール」という名前のとおり、「光触媒」を搭載しているわけですが、この光触媒は「吸着させて、分解して、また吸着力を元に戻す」という「分解・再生型」で、基本的にフィルターの交換が必要ないんです。この「アパタイトフィルター」を初めて搭載したのが2003年、そして翌年の2004年には「ストリーマ」を初めて搭載した製品を出しているわけで、こうしたダイキン独自の方法をすでにもう7年もやっているわけです。以来、毎年マイナーチェンジを繰り返しながら改良を重ねてきていますが、こうした技術がたまたま2009年に新型インフルエンザの流行で注目されたというだけで、私たちはインフルエンザ対策に照準を合わせて製品を作ってきたわけでもありませんし、あくまで基本性能にこだわってきた。そうした私たちのこだわりである部分を高く評価していただいたということは、本当にうれしいことです。
-- そもそも「ストリーマ技術」については、昨日今日に始まったものではないですからね。でも、たまたま新型インフルエンザの流行という事件があって、いいタイミングでテレビCMなども始まりましたね。
私たちがインフルエンザウイルス対応の技術評価を行おうとしていたのが2008年末くらいなんですが、その当時「パンデミック」と言えば「H5N1」の非常に強毒性の「鳥インフルエンザ」でした。このウイルスに対する技術評価をしたいということで、ベトナムの研究所と共同で動き始めていた頃に、当時はまだよくわかっていなかった新型ウイルスがメキシコで発生したということを聞きました。その後、それほど強毒性ではない「H1N1」のウイルスということがわかってきましたが、こうした新型ウイルスに対しても、いち早く技術評価を行ってきました。
実はこうしたウイルスに関する試験というのは日本国内ではなかなかできないのですが、以前から共同研究をさせていただいている先生のつながりで、ベトナム国立衛生疫学研究所のマイ先生をご紹介いただきました。通常ですと、こうした国立の機関で民間の技術検証というのはなかなかできないのですが、マイ先生も私たちの技術に理解を示してくれ、実際の新型インフルエンザウイルスに対する評価実験を行っていただき、結果として、新型インフルエンザウイルスの「100%除去」を報告していただいたわけです。もちろん、これは「ストリーマ技術」に対する評価で、製品自体の評価ではないのですが、その機能が搭載された製品ということで、2009年の秋にはテレビCMなどでPRをさせていただきました。
-- そのテレビCMでのPR効果によって、製品の注目は一気に高まってきた印象がありますが、最終的に、ユーザーからしっかり評価されたのは、空気清浄機としての基本性能だったというのが印象的でした。
評価をいただいたのは本当にうれしいです。こういう基本性能というのは、なかなか訴求しづらい部分がありまして、たとえば店頭などでダイキンの空気清浄機をお客さんに説明するような場合には、基本的な部分から全部説明する必要があるわけです。これに対して他社さんの製品では「見た目がいい」とかいう理由でサクッと買われていってしまう。こういう点で販売員達がずっと悔しい思いをしていたということはありました。
この点については、社内でもいろいろ議論はあって、もっとわかりやすいアピールポイントをつけたほうがいいんじゃないかという意見もありました。しかし、「いやいや、それこそストリーマじゃないですか」ということになり、2008年末くらいからはこのストリーマ技術を再評価しようということになったんです。その結果が、いいタイミングでアピールになったのはよかったかもしれません。
私たち設計者は、ときにユーザーの方のお宅に「お掃除」ということで出かけていき、そこで製品に対する意見をいろいろヒアリングさせていただくのですが、ダイキンのユーザーさんの多くがおっしゃるのは「吟味して買いました」ということです。これは非常にありがたいことで、技術者にとっては、吟味されないで買われるほどさみしいことはないわけです。逆に、よく吟味して調べ上げて買ったというお客さんについては、製品に対する愛着もありますし、製品自体はとても気に入っているので、今後もフィルターなどの中身だけを交換しながらずっと使っていきたい、という意見をいただくことは多いです。そういうユーザーさんの声はとても大事にしていきたいと思っていますし、今回の受賞についても、非常にこの考えにマッチしています。製品の性能をよく吟味していただいている、ということ自体が本当にうれしいですね。
-- クチコミなどを見ていても、ダイキンの空気清浄機のユーザーさんは、製品に非常に愛着を持って接している感じが伝わってきますね。その空気清浄性能に対してはほぼすべてのユーザーさんが満足していますし、その基本性能を高く評価されて、ほかのユーザーにも勧めているようなケースをよく見かけます。結局、新型インフルエンザも一時的なブームだと思います。この先も、インフルエンザ対策だけで、空気清浄機の需要が伸びるとは思えませんし、インフルエンザウイルスがいつまでもあっても困りますしね(笑)。ただ、私たちのストリーマ技術は、もともとは「シックハウス対策」という観点から開発されたもので、ホルムアルデヒドなどの有害成分を除去する目的で開発されたという経緯があります。今後、環境問題などが大きくクローズアップされていく中では、こういう技術こそが生きてくると思うんです。
「ウイルス」と言っても基本的にはタンパク質の塊なわけで、それを酸化分解できるものなら、基本的に何でも効果はあるわけです。強い酸化分解力を持つストリーマも、もちろんその1つです。ただ、効果を謳うにはそうした1つ1つのウイルスや細菌に対して1つ1つ実証実験を行っていく必要があるわけで、それをコツコツやってきたということの結果なんですよね。ダイキンのストリーマは、インフルエンザウイルスだけでなく、さまざまなニオイやガス、化学物質、細菌などに対して、他社に負けないほど多くの実証実験を行っていますし、そういうことの積み重ねが最終的に評価されたのだと思っています。
カカクコム執行役員・鎌田より、ダイキン工業 空調生産本部 商品開発グループ 主任技師 岡本誉士夫さんに、アワード大賞受賞記念の楯を進呈させていただきました
-- 最後に、本製品を評価していただいたユーザーの皆さんにひと言メッセージをお願いします。2009年は新型インフルエンザの流行という一種のブームがあったのは確かですが、決してそこだけでなく、私たちがこだわってきた基本性能の部分をきっちり評価いただいたのは、本当にうれしかったです。これからも、本格的な基本性能の部分にはこだわっていきたいと思っていますので、今後もよろしくお願いします。ただ、まだ空気清浄機の普及率というのは全世帯の30%程度ですので、ぜひもっと多くの皆さんに使っていただければと思っています。
ユーザーの皆さんの厳しい目で評価いただくことで、開発のほうも切磋琢磨しながらよりいいものが生み出せると思っています。こうした貴重な意見を受け止めながら、製品の改良に生かしていきたいと思っていますので、もっと多くのご意見をいただき、ユーザー・メーカーとも意識を高めていければいいと思っています。どうもありがとうございました。