毎回意外な製品が大賞に選出される「パソコン関連部門」だが、2009年も意外な製品が受賞することになった。「SSD」というパーツは、従来のHDDと同様にデータを記録するための記録デバイスであり、一般のユーザーにはそれほどなじみがない製品かもしれない。しかし、自作PCユーザーの間では、2009年はこのSSDが大ブレイクした年となっており、こうした声を反映するかのように、なかでももっとも人気のあったインテルのSSD製品が、パソコン関連部門の大賞に選出されたのである。
SSDは、原理的にはフラッシュメモリーと同じで、物理的な接触によってデータを記録するHDDとは違い、純粋に電子的にデータを記録するデバイスだ。モーターやディスクなどの機械的な駆動部分を持たないため衝撃に強く、さらにデータの読み書きが速いというメリットがあるため、パソコン用の次世代記録デバイスとして注目を集めている存在である。しかし今のところ、HDDほどの大容量を実現できておらず、また価格的にも高価なので、一部のパソコンにしか用いられていないのが実情だ。
しかし、SSDのネックとなっていた販売価格が2009年は一気に下がり、SSD人気に火を点けたのである。たとえば、2008年9月に登場したインテル「X25-M」の80GBモデル「SSDSA2MH080G1」は発売当初9万円前後の価格をつけていたが、今回アワードを受賞した80GBモデル「SSDSA2MH080G2R5」は、2009年8月の発売当初の価格で26,470円(価格.com調べ)となっており、1年前の状況に比べると80%程度も価格を下げたことになる。さすがにPCパーツに9万円も出せないが、2万円台なら手が届くというユーザーは多いはずで、それによって使用しているPCのパフォーマンスがかなり向上するため、本製品をはじめとするSSDは、2009年のPCパーツ業界では、ほぼ唯一と言っていいほどのヒット商品になったのだ。
このようにSSDというジャンル自体が非常にホットだった2009年だが、なかでもインテル製のSSDは、インテルブランドによる安心感と技術に裏打ちされた安定感によって人気が高く、秋葉原のパーツショップなどではしばしば品切れが起こったほどだった。購入したユーザーのレビューでも、その高速性能と、安定した動作にはかなり満足している書き込みが多く、レビュワーのほぼ全員が満点の評価をつけている。80GBの容量で2〜3万円という価格はHDDと比較するとまだかなり高いが、ユーザー側のこの評価の高さを見れば、SSDのもたらす体感的なパフォーマンス向上が、この投資に十分見合うだけのものであることが理解できるはずだ。
注:文中のレビュー評価は、2009年1年間での評価になります。
リセラー・チャネル・オーガニゼーション
マーケティング・マネージャー
池田明盛さん
-- かなり多くの製品ジャンルが存在するパソコン関連カテゴリの中で、今回大賞に輝いたのが「SSD」という、かなりマニアックな製品で、この結果には正直私たちも驚きましたが、今の率直なご感想はいかがでしょうか?確かに私たちもこの話を最初に聞いたときは非常に驚きました。ホントですか?と(笑)。
インテルは基本的にはCPUやチップセットといったマイクロプロセッサーのメーカーで、一昨年くらいまでは、SSDなどのメモリー製品に関してそれほど特筆すべきようなプロダクトもなかったというのが本当のところです。
一昨年2008年の9月に最初のSSD製品を発売したわけですが、そのときは今回受賞した製品と同じ容量80GBの製品でも市場価格で7万円以上はしていましたから、本当にPC自作が好きな、いわゆるエンスージアスト向けの製品だと思っていました。
そのうちに、SSDという製品の認知度が徐々に上がってきたのと平行して、製品の世代も、第一世代の50nm(ナノメートル)プロセスから、第二世代の34nmプロセスへとさま変わりし、多少の高速化とコストダウンが可能となりました。値段も2年前に出た製品に比べると3分の1程度になり、ようやくユーザーの皆さんにとって「これなら買ってもいいかな」というレベルにまでなったことで、一気にエンドユーザーからの人気が高まったという印象です。
-- SSDという製品は、インテルの製品ラインアップの中でも異色ですよね?インテルはもともと店頭に並ぶようなパッケージ製品を作っているわけではなく、PCメーカーなどにCPUなどのパーツを供給しているサプライヤー的な位置づけのメーカーなので、SSDを最初に発売したときにも、市場に直接出すという位置づけではなく、このような(右写真参照)ただの段ボール箱に入った状態でした。ただ、日本の自作PC市場は非常にユニークで、こういった製品でもけっこう多く買っていただいたのです。そこでこの製品を、きちんとパッケージ化して自作PC市場に出してみたらどうか、という話になったわけです。
ただ、市販パッケージ化するにあたって、販売店のほうから「数万円もするような高級パーツなのに、このような段ボール箱で売るのは売りづらい」という意見が上がり、急遽スリーブを作成し少し見栄えのいい形にして出しました。すると、やはりエンドユーザーの反応が非常によかったので、その声を工場側にフィードバックし、次に出す製品はもっときちんとした化粧箱で出そうということになったのです。それが今回大賞を受賞させていただいた第二世代のSSD製品となったわけです。
元来、SSDは、振動などに強く壊れづらいということから、ノートPCやサーバー向けを想定して作られた製品でした。ですので、デスクトップPC用途というのはまったく頭になかったのですが、しかし実際に販売を初めてみたところ、デスクトップPC向けに使われるケースが圧倒的に多かったのです。そのため、このパッケージの中には、デスクトップPCでも便利に使えるように、3.5インチベイに取り付けるためのマウンターを入れています。こういう部分も、日本市場のユーザーさんのニーズをフィードバックしてできたものなんです。
-- ということは、ある意味で、日本のユーザーさんが育てた製品と言えるのかもしれませんね。まだ値段が高かった頃でもかなり反応よく購入していただいたことが、その後のSSDの拡大につながったと言えるような気がします。そうですね。あとは、この製品自体のパフォーマンスがやはりよかったんだと思います。特に日本のユーザーさんは、値段は高くても高いパフォーマンスを発揮するものを好んで買われる傾向がありますので、そうしたユーザーさんに「インテルのSSDはいいよ」と言っていただいたことが、その後の人気につながったと思っています。
-- 秋葉原のパーツショップなどでも、2009年はSSDがダントツの人気で、特にインテルのSSDは入荷するとすぐに売り切れてしまうほどの人気だったと聞いていますが。この受賞製品もそうですが、2009年7月、ちょうど第二世代のSSDになった頃から、需要に対して供給が少し追いつかなくなるような状況になりました。SSDというのは、CPUなどとは違い、かなり多くのメーカーさんが発売されていますし、選択肢もそれだけ多く存在しています。ですので、最初のうちは私たちも「インテルの製品が市場になくなっても、ほかのチョイスがあるし、それでSSDを買わなくなるということはないだろう」と思っていたのですが、実際に販売店さんの話を聞いてみると、インテルの製品を指名買いしていく人が多く、在庫切れの場合は予約をして帰って行くという人までいるということでした。ユーザーさんのこの製品に対する強いご要望を感じましたね。
-- 多くのメーカーがある中で、インテルのSSDが特に支持されたのはどんなところにあると思いますか?ここまでの支持をいただいた点は私たちも驚きです。ほかのメーカーさんの製品と比べてもそれほど大きなスペック上の差はないと思いますが、やはり実際に使ってみた方の実感スピードが高かったのかもしれませんね。実際ユーザーさんのテストなどでも、インテルのSSDを使った場合にランダムアクセスのスピードが速いという結果が出ていますし、カタログスペックには現れない部分で、インテルの製品のほうが体感的に速いという評判が、クチコミなどで伝わっていったのが大きかったのかもしれません。その違いがもし出るとすれば、インテルが独自で作っているファームウェアとコントローラの出来のよさかと思います。このあたりはノウハウの固まりですね。
-- CPUがある程度高速化し、メモリーも大容量になってきて、最近のパソコンのボトルネックはHDDの読み書きの速度の遅さにあったと思います。そこにいいタイミングでSSDが登場したのもよかったのかもしれませんね。そうですね。これまで自作PCユーザーが重視していたのはCPUやグラフィックチップの高速化だったと思いますが、SSDというデバイスが登場したことで、その力点がデータの転送速度などのほうにシフトしてきているというのは確かに感じています。もともとはノートPCやサーバー用に作られたSSDをデスクトップPC用に使うという、私たちも想定してなかったような新しい使い方をしていただき、それによってパソコンの性能が向上するというユーザーさんのニーズにSSDが見事にマッチしたということが、この製品が評価された大きな理由の1つだと思います。
カカクコム執行役員・鎌田より、インテル リセラー・チャネル・オーガニゼーション マーケティング・マネージャー 池田明盛さんに、アワード大賞受賞記念の楯を進呈させていただきました
-- 最後に、インテルのSSDを支持していただいたユーザーの皆さんにひと言メッセージをお願いします。まず第一に申し上げたいのは「秋葉原のユーザーさんが市場を作っている」ということです。そうした目の肥えたユーザーさんがオピニオンリーダーとなって、「いい製品はいい、悪い製品は悪い」と評価してくださる。そうした厳しい評価の中でこうした高い評価をいただけたわけですから、まずは秋葉原のユーザーさんにお礼を申し上げたいと思います。そして、秋葉原のユーザーさんから発せられたオピニオンがやがて全国のユーザーさんに徐々に広まっていったということに対しても感謝しています。本当にありがとうございました。