パソコン本体に大きなトピックがなかったのと同様、2010年はパソコン関連機器についても、特にこれといった大きなトピックがなかった年だった。そうした中にあって、比較的堅調な動きを示したのが「液晶ディスプレイ」である。液晶ディスプレイについては、ここ数年でいくつかの大きな技術革新があった。その1つが「高速な動画への対応」である。
液晶ディスプレイは、それまでのパソコン用モニターという枠から、ゲーム機やテレビチューナーなどを接続して動画も十分に楽しめるマルチメディアモニターへと変化しつつある。入力インターフェイスでは、AV機器向けのインターフェイスであるHDMI端子を搭載。さらに、液晶テレビなどと同様に、映像処理用の専用プロセッサー導入することで、動きの速い映像などでも残像感がないように新たに設計し直されてきたのである。こうした変化によって、液晶ディスプレイはパソコンのためだけの表示デバイスではなくなり、ゲーム機やAV機器などを広く接続して楽しめるマルチメディアモニターへと変わってきているのだ。
液晶パネル自体も、1920×1080ドットの表示ができる「フルハイビジョンパネル」が標準となり、それに伴って画面サイズも21〜24型が売れ行きの中心となった。しかも、価格は1〜2万円台ということで、その性能と、ユーザーが受ける恩恵に対してみると、非常にお買い得な状況が続いているのである。そうした価格面の後押しもあって、この数年の液晶ディスプレイ市場は、パソコン本体の売り上げ低迷とはあまり関係なく堅調な進化を遂げてきた。こうした背景もあって、ここ数年、おもに海外メーカー製の液晶ディスプレイが価格.com上でも高い評価を得てきており、過去のプロダクトアワードでもカテゴリ大賞を受賞した製品が多いのだが、2010年のプロダクトアワードでカテゴリ大賞を受賞した製品は、国内メーカーである三菱電機製の「Diamondcrysta WIDE RDT231WMS-D」(以下、RDT231WMS-D)だった。
「RDT231WMS-D」は、上に挙げたような特徴を網羅した23型マルチメディアモニターである。23型のフルハイビジョン対応液晶パネルを採用。バックライトは流行のLEDではなくCCFLを採用するが、5000:1という高コントラスト設計と、5msという高速な応答速度を実現している。また、マルチメディアモニターとして重要なHDMI端子は2系統を装備し、3W+3Wのステレオスピーカーを搭載するなど、今マルチメディアモニターに求められる性能や装備はすべて網羅している。しかし、このクラスの製品では、価格の安い海外メーカー製を中心に非常にライバルが多いこともまた事実。そんな中で、この「RDT231WMS-D」が高く評価された理由は、やはりその「画質」にあった。
ユーザー評価を見ると、画質についての高い評価が目立つ。特に、この「RDT231WMS-D」に搭載されている画像処理LSI「ギガクリア・エンジン」による「超解像技術」が、ユーザーに高く評価されていることがわかる。超解像技術というのは、液晶テレビなどに広く搭載されている映像処理の種類で、言ってみれば、入力された映像信号を再度構成し直して美しくするという独自の内部処理である。非常に高度な処理であるため、一般的な液晶ディスプレイでこの超解像技術を搭載することはまれであるのだが、本製品では惜しげもなくこの技術を搭載。実際に使用したユーザーの感想を見ても、「さすが三菱!」「家で使っている液晶テレビよりもキレイ」「ゲームなどでも残像感がない」など、非常に高い評価を受けている。
なお、本製品は、流通チャネルが限られた限定製品であったため、2011年1月末日現在では入手できない状況になっているが、流通時には22,800円という価格で販売されており、性能に対しての価格の安さという点でも、評価が高かった。価格で言えば、このクラスの製品で、本製品よりも安い海外製ディスプレイは存在しているのだが、その価格差を補って余りあるメリットが、この「RDT231WMS-D」にはあると、多くのユーザーが評価したのが、今回のカテゴリ大賞受賞につながっていると言っていいだろう。
注:文中のレビュー評価は、2010年1年間での評価になります。
三菱電機
デジタルメディア事業部
映像情報営業部長
木村 彰彦さん
-- 今回、パソコン関連製品部門で、「RDT231WMS-D」が大賞に選出されました。本製品受賞に関する感想をお願いします。
まずは、大賞に選出いただき誠にありがとうございます。本モデルは実際の販売台数も多く、その結果、2010年はこの製品をはじめ、三菱電機のディスプレイ全体が皆さまからご好評をいただき、調査会社の年間アワードにも選ばれる結果となっています。何よりも実際に本モデルを購入、使用されているユーザーの皆さまからの満足度が高いということはうれしい限りです。
-- 本製品の評価ポイントとしては、やはり「画質」、「安心感」が圧倒的だったように思います。価格.comのユーザーの皆さまの中には、かなり以前からパソコンに触れているようなパソコン歴の古い方もかなり多くいらっしゃいますが、そうしたユーザーの皆さまが今回の製品に対して「さすが三菱のクオリティ!」といった賛辞の言葉を寄せているのが印象的でした。
画質に関してのこだわりは、以前から脈々として受け継がれている部分ですね。三菱電機の映像関係製品は、ディスプレイにしてもテレビにしても、現在は京都の拠点で開発しています。そこでは、以前「ダイヤモンドトロン管」を開発したような「高画質へのこだわり」というDNAが受け継がれています。また、同じ場所に、三菱電機の研究所もあり、ディスプレイやテレビ、プロジェクターなど、さまざまな映像関連製品に利用できる技術の研究が行われていますが、そういう面での事業の壁を超えたシナジー効果もかなりあると思いますね。今回特に高くご評価いただいた「超解像技術」に関しても、元々はこの研究所で作られたものです。ディスプレイ製品だけでこうした技術の開発を行うのはコスト面などで難しい部分がありますが、テレビやプロジェクターなど関連分野の製品でも同じ技術を利用できるため、安定した研究・開発が可能になっているのです。このあたりは、三菱電機の映像製品の開発の特徴かもしれません。
国内メーカーとしてのサービス体制の良さ=不具合発生時には、サービスの者がお客さまのところにおうかがいし、処理をするという安心感もご評価いただけたのだと思います。
-- 液晶ディスプレイは、今非常に価格が下がっていて、コスト面ばかりが重視される傾向にあると思いますが、今回、値段的にはやや高価でありながらも、三菱電機の高画質製品がユーザーの皆さまからの高い評価を受けたということは、非常に重要な意味があると思いますね。
おっしゃる通り、最近の液晶ディスプレイは、価格帯で言えば1万円台の安い製品がシェアの多くを占めている状況にあります。でも、そうした安価な製品ばかりでは、お客さまの「豊かさを求める」というニーズに応えられないと思います。特に日本のユーザーは、海外などに比べて品質にこだわる人が非常に多い。私たちはそうした方々のニーズに応えたいし、高画質の分野は、これまで三菱電機が培ってきた技術やノウハウが生かせる部分でもあるわけです。このような背景から、前述の「超解像技術」をはじめ、「倍速補間」「MPエンジン」といった技術の開発に注力してきました。
-- 本製品は、その販売価格にしてはさまざまな技術が盛り込まれていますよね。ユーザー評価でも、価格に対する品質の高さに驚かれていた方が多かったようです。
超解像技術に関して言えば、実用化からしばらく経ってコスト的にこなれてきた部分があります。2009年は超解像技術を搭載したモデルが4万円ぐらいでしたから、その点、2010年はだいぶコストが下げられ、売れ筋の安価なディスプレイの価格プラスアルファくらいの値段で出せたという点は大きいでしょうね。また、本モデルについては、一般的な店頭販売モデルに比べて、宣伝・販促などの経費がかからなかった部分もコスト減に寄与しています。このモデルについてはカタログを作らずWebページだけの紹介でしたし。そのほかにも、ケーブルや保証期間などの細かなコストカットはしていますが、とにかく超解像技術だけは残して、画質面だけは高いレベルのものをできる限りお手頃な価格で提供しようというコンセプトでした。
-- コスト面での要求が非常に厳しい液晶ディスプレイ市場の中で、こうした高画質モデルを多数ラインアップしていくのは難しいのではないでしょうか?
正直非常に厳しい面はあります。ただ幸いなことに、三菱電機には過去からのさまざまな技術の蓄積やノウハウがありますし、先ほど申し上げた京都の研究所などの体制もありますので、高画質技術の開発などについても持続して行っていける状況にあります。ですので、厳しい市況ではありますが、この高画質へのこだわりだけは何とかして続けていきたいと思いますね。私たちも頑張りますし、他のディスプレイメーカーから面白い製品が出てくれば、業界全体がますます盛り上がってくると思いますし、そのことが最終的にはユーザーの皆さまの高いニーズを満たすことになると思います。
-- それは非常に楽しみです。今後もぜひ魅力あふれる製品作りをお願いします。最後に、価格.comのユーザーの皆さまに向けてひと言メッセージをお願いします。
このモデルに関して言えば、5月に発売してから8月くらいまではそれほど売れていたというわけでもなかったのですが、価格.com上でユーザーの皆さまが高く評価していただき始めてから注目度が上がり、8月くらいから動き始めたんです。先ほども申し上げた通り、本モデルについては広告宣伝を一切していなかったので、価格.comのユーザーの皆さまにご評価いただいたことは非常に大きかったと感じています。
今後もユーザーの皆さまのさまざまなご要望に応えていきたいですし、私たち三菱電機としては「高画質」という部分で、皆さまの豊かさを支えるような製品を出していきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。