適切な方法と頻度で水換えを行うことで、アクアリウムを長く楽しむことができます。
アクリウムを維持していくうえで、いちばん基本的なメンテナンスとなるのが水換えです。毎日餌を投入することにより、その多くは魚の成長に利用されますが、すべてが消費されるわけではなく、排泄物や餌の食べ残し、あるいは枯れた水草などが、日々水槽内に蓄積していきます。大きめのゴミや底床内の汚れはわかりやすいのですが、一部は目に見えにくい形で水に溶け込みます。これらの影響による水質の変化は徐々に進行するため、魚も慣れていき、すぐに調子を崩すようなことはありませんが、水の色が黄ばんで見えたらかなり悪化が進んでいると思ってよいでしょう。それが限界を超えたところで、突如魚が死に始めたり、病気が発生しやすくなったりする、といったことが起こります。
また、古い水に慣れた魚を別の水槽に移したりしたときに、水質の違いによるショックが大きなダメージとなる場合もあります。「水換え不要」を謳っている商品もありますが、有害な物質を、直接的な害のない成分に変換はするものの、さまざまなものが蓄積していく状況には変わりなく、キリッと澄んだ水をキープし続けるには、定期的に古い水を新しい水と交換する「水換え」を飼育者の手で行う必要があるのです。「部屋の空気の入れ替え」と同じことだと考えてみてください。
水換えの頻度や量は、魚の種類によっては真新しい水よりも少しこなれた水を好むなど、適したペースは異なります。一般的には「1週間に3分の1程度」とされますが、まずはセオリー通りに始めてみて、徐々に自分の飼っている魚の状態や、生活のペースに合った方法を見つけてください。

水換えホースと「サイフォンの原理」を用いて、水槽からバケツへ水を抜いていきます。周囲がぬれないように、床にはシートや古タオルを敷いておくとよいでしょう。
水換えに必要な道具は、水を吸い出すのに使うホースと、その水を溜めるバケツなどの容器です(水を溜められればなんでもよいのですが、取っ手のあるバケツが使いやすいと思います)。バケツを使わずに、長いホースで風呂場やベランダに直接水を流す方法もあります。そのほかに、新しい水に水道水を使う場合はカルキや重金属の中和剤(お住まいの地域の水道水の成分に合わせて使ってください)、飼育魚に好適な水質調整剤、また水槽に水を入れる際に勢いを弱めるためのスポンジや、底床を巻き上げないための受け皿(縁が少しせり上がっていると、水流が上に向くのでレイアウトに影響しにくい)があるとよいでしょう。
さらに、お風呂の水を洗濯機に移すときなどに使うポンプがあると非常に重宝します。ホースは水道の蛇口に接続できる太さのものが一般的ですが、水槽が小型の場合は扱いにくくなるので、ホームセンターなどで少し細めのホースやビニールチューブなどを購入するとよいでしょう。透明なビニールチューブは、ゴミや砂を吸って目詰まりしたときなどにわかりやすくて便利です。ただし、水が残ったまま放置すると内部にコケが生えることがあります。ベタ用の超小型容器や、水質に敏感な魚を飼っている場合は、エアーチューブを使う方法もあります。
水を吸い出す方法としては、昔はよく、ホースに口をあてて吸い出していましたが(今でも多いかもしれませんが)、 慣れないと水が口に入ってしまったり、またそもそも衛生的ではないのでおすすめできません。手軽な方法としては、ホースを水槽内に入れて水を満たし、一方を水中に入れたまま、もう一方は指で口を塞いでバケツまで誘導し、そこで指を離すと「サイフォンの原理」によって水が放出されます。ホースを入れるスペースのない小型水槽やレイアウトを壊す恐れがある場合は、ホースの途中にポンプが接続されていたり、弁が内蔵されていて数回上下に振ることで水を吸い出せる商品も販売されているので、それらを使うといいでしょう。コケ取りやクリーナーと一体になっていて、掃除を同時にできるものもあります。

各アクアリウムメーカーからさまざまなタイプの水換え用ホースが販売されています。水槽の大きさなどに応じて、使いやすい商品を選びましょう。
ホースの長さは、水槽を置いてある場所の高さなどにもよりますが、バケツを使う場合は2メートル程度あれば十分です。水槽を高い位置に設置してある場合は、作業を始める前に椅子(クッションのない平らなスツール)や踏み台などを準備して、そこにバケツを置くようにします。高低差があるほど早く水を抜くことができますが、あまり離れると作業がしづらく、万が一、ホースの先がバケツから外れたときなどに対応が遅れるので、ホースの両端を左右の手でコントロールできるくらいの距離に置くのがよいでしょう。ホースを水槽やバケツに固定できるホルダーも市販されています。
水槽に水を入れる場合には、注ぎ口の付いたバケツ(水差しバケツ)があると便利です。水を抜くときと同様にサイフォンを利用することもできますが、その場合はバケツの方を水槽よりも高い位置に置かなければならないので、必ず安定した丈夫な台を使ってください。水槽の上があいているなら、ガラス蓋を外してから、必ず両サイドの縁にかかる形で板を渡し、そこに置くようにしてください。絶対にガラス蓋の上に置いてはいけません。お風呂用のポンプがあると、バケツを床に置いたままでも、ある程度の高さまでは水を揚げることができます。また、水草レイアウト水槽などで作業中でも水位を変えたくない場合には、水を抜きながら同時に給水を行う方法もありますが、換水量がわかりにくい、給排水の両方に気を配るなど、かなりコツが要るので、経験を積んでから試してみてください。
冬場などには給湯器からの温水を給水に使うことも多くなりますが、その際、水が白くなるほど細かい気泡が混じることがあります。これはもともと水道水に含まれていた気体が急激な加熱によって膨張し、目に見える大きさになったもので、これを消毒用の塩素ガスと思っている人もいるようですが、実際には普通の空気とほぼ同様です。大きな魚にはそのまま給水しても影響はありませんが、小型魚や幼魚には、エラに付着して呼吸を阻害する可能性もあるので、しばらく放置するか、かき混ぜるなどして気泡がなくなってから使うようにします。
いずれにしても、ホースが細くなるとその分水を抜くのに時間がかかるので、その場を離れたり、別の作業を始めたりして、水換えをしていることを忘れないように注意しましょう。また、作業前には水槽の前を広くあけて、新聞紙やタオルなどを敷いてから行うことをおすすめします。
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