総評・受賞製品一覧
全体的には「無風」のアワード結果。いっぽうで数こそ少ないが、思い切り突き抜けた価値観の新製品もしっかり評価された
2024年のデジタル・家電市場を振り返ってみると、記憶に残るような新製品がほとんどなかったという印象しかない。3年にわたるコロナ禍で、メーカーの開発力が弱まってしまったのか、それとも、これらの市場における技術革新はもう出尽くしてしまったのか。いずれにしても、どこかワクワクするような新製品にこれと言って出会わなかった1年だった。
そんな年の「価格.comプロダクトアワード」で、各カテゴリの金賞や、部門大賞に選出された製品の顔ぶれを見てみると、やはり一見して地味な印象がぬぐえない。いずれもそれなりにすぐれた特徴を持っているし、コスパ的にも相当に高い製品がそろっているのだが、これまでのアワードでもおなじみの顔ぶれが多く、数年連続で受賞しているシリーズやメーカーも数多く見られた。要するに、これまでの流れの延長線上で評価された製品が多く、そこから時代の流れの変化を読み取るのもなかなか難しいという結果だった。
そんな「無風」とも言える今年のアワードだが、いくつか気になった製品もある。まずオーディオ部門で大賞を受賞したソニーの「ULT WEAR WH-ULT900」。重低音重視の若者向けワイヤレスヘッドホンという印象の製品だが、その突き抜け方がすごい。最大にブーストすると、ヘッドホン自体がビリビリと振動するほどの重低音が響きまくるというぶっ飛び方。これには、重低音好きはもちろん、一般のリスナーでもその迫力には舌を巻いた。
調理家電部門で大賞を受賞したツインバードの「匠ブランジェトースター TS-D486」も、突き抜け方という部分では似通っている。これまでは低価格のオーブントースターばかりを作ってきた同社が、一念発起して作ったのは、プロのブーランジェ(パン職人)の監修を受けた、プロの焼き味をそのままに再現した本格トースターだった。このあまりの突き抜け方に驚いた人は多く、昨季の年末年始の話題を一気にさらったのは記憶に新しい。
高級という意味で突き抜けた製品もある。美容・健康家電部門で大賞を受賞したパナソニックの「リアルプロ EP-MA120」は、13年ぶりのフルモデルチェンジで、すべてをブラッシュアップ。思い切り高級感のある質感とデザインを身にまとい、50万円を超えるような高価格製品ながら、一気に人気となった。また、自動車・カー用品部門で大賞を受賞したトヨタの「クラウン(スポーツ)」も、思い切った全面モデルチェンジが賛否両論あったものの、できあがった実車は、パッと目を引くスポーティーなデザインと、伝統の乗り心地を高度なバランスで進化させており、結果として高い評価を得た。
これらの製品に共通するのは、いい意味での「突き抜け感」だ。これまで培ってきた伝統やブランド、さらには既成概念にとらわれず、新しい尺度、新しい価値観を信じて、世に送り出した製品である。それが、こうして多くの価格.comユーザーに高く評価されたことは、素直にうれしい。
すでに安定した評価があるものを作り続けることも大事。物価高の時代にあって、高コスパを貫き続けることも大事。しかし、そのいっぽうで、勇気を持って新たな価値観を世に問うていく、そういう姿勢のモノ作りを行っていくことが、特に今の停滞する日本社会においては、大事なのではないだろうか。そんなことを感じた今年のアワードだった。
株式会社カカクコム
価格.com
ショッピングメディア本部
メディアクリエイティブ部
価格.com編集長
鎌田 剛























































































































































