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カー用品部門 大賞
受賞メーカー訪問インタビュー

JVCケンウッド 訪問インタビュー
ハイレゾ対応で高い音質が魅力の「MDV-Z702W」開発秘話に迫る!

JVCケンウッドご担当者  株式会社JVCケンウッド
 オートモーティブ 市販事業統括部 第一商品企画部
 スペシャリスト 渋谷 英治さん
 オートモーティブ 市販事業統括部 音質開発部
 部長 音質マイスター 早川 純一さん
 オートモーティブ 市販事業統括部 音質開発部
 音質研究室 室長 高橋 憲一さん
 オートモーティブ インフォティメント開発部
 電気技術部 チーフ 舟見 剛さん

価格.com - このたびはプロダクト大賞選出おめでとうございます。まずは今の率直なご感想からおうかがいできますでしょうか。

渋谷さん - ひと言で言うと「驚き」です。まさかこのような賞をいただけるとは思っていませんでしたので。 この「MDV-Z702W」という製品は、2011年にスタートした「彩速ナビ」シリーズの5世代目のモデルとなりますが、なかでも、この「Zシリーズ」はシリーズのフラッグシップ的な高性能モデルと位置づけています。

このシリーズで私たちが一貫してやってきたのは、「車の中でよい音をリラックスして聴いていただき、ゆったりした気持ちで安全に車を運転していただく」ということです。JVCとケンウッドという、どちらもオーディオメーカーとしての長い歴史を持つ会社がひとつになって作り出したプロダクトということもあり、やはり「音」という部分にはかなりこだわってきました。発売当初から「クラス最高の音」ということでうたってきましたが、実際には「クラスを超えた音」になってしまいました。実際、私たちもさまざまな製品で音をチェックしていますが、数万円上の高級機と比較しても遜色ない音が出せていると思います。

ちょうど2013年に、スマートフォンがガラケーを完全に抜いたということで、今後はスマートフォンと同じような操作ができるようにすべきだろうということで、静電式タッチパネルを採用し、地図の拡大縮小などのマルチタッチ操作にも対応した製品を世に出して注目を集めましたが、今回のモデルでは「音」の面でハイレゾに対応したということで、またひとつ注目を集めることができました。そういう意味では、現在私たちが持てる技術をすべて注ぎ込んだ「集大成」というべき、完成度の高いモデルに仕上がっているんじゃないかと思います。

プロダクトアワード2015 カー用品部門 大賞を受賞した「彩速ナビ MDV-Z702W」

プロダクトアワード2015 カー用品部門 大賞を受賞した「彩速ナビ MDV-Z702W

価格.com - ケンウッドのカーナビと言えば、以前から「音」という部分には非常にこだわってきていると思いますが、そうしたこだわりの点が年々高い評価につながってきているような感じがします。本モデルでは、ついに「ハイレゾ再生」にまで対応しましたし。

渋谷さん - 今回のモデルでは「ハイレゾ」というのがひとつのキーワードだったわけですが、ハイレゾを楽しむ環境が徐々に整いつつあったというタイミングにちょうどよく合ったということも大きいと思います。まだ、車の中でハイレゾを楽しむというには少し早いかなというタイミングではありましたが、この「Zシリーズ」は、こうした最新トレンドを少し早めのタイミングで投入していくというモデルですし、価格.comのユーザーさんもそうだと思いますが、そうした最新トレンドに敏感な方々がこのシリーズを支持してくれています。

早川さん - タイミングはよかったですよね。「ハイレゾ」という波がちょうど来ていたことと、それに見合うだけの性能があったので、それでブレイクしたんだと思います。

ハイレゾの注目度が高まりタイミングが合ったと語る渋谷さん、早川さんハイレゾの注目度が高まりタイミングが合ったと語る渋谷さん、早川さん

ハイレゾの注目度が高まりタイミングが合ったと語る渋谷さん、早川さん

価格.com - レビューを読んでいくと、ハイレゾ以外のCDや圧縮音源の再生でも、「これまでのカーナビとは明らかに音のクオリティが違う」というような評価も多かったです。

高橋さん - 基本的な部分は変えていないんですが、思い当たる節はあります。私が音質設計を担当した「Drive Equalizer +」という機能がありまして、これは、走行ノイズでカーオーディオからの音が聞こえづらくなるという問題を解決するために行う音質補正技術で、前モデルから搭載されていたものなのですが、初期設定でオフになっていました。なので、この機能に気付いていないお客様が多かったんじゃないかと。

この機能をオンにしておくと、車が走り出して走行ノイズが乗ってきても、止まっているときと同じようなバランスで感じで聞こえます。私もテストで長距離を走った際には、走っているうちに逆にボリュームを下げてしまったくらい、よく聞こえるんですよね。今回のモデルでは、この機能が初期設定でオンになっていますので、そこで初めてこの機能の効果を知ったという人が多かったんじゃないでしょうか。価格.comのクチコミもチェックしてますが、これに気付いた人は1人だけでしたね(笑)。

「Drive Equalizer +」の存在も音質の高い評価に繋がったと語る高橋さん

「Drive Equalizer +」の存在も音質の高い評価に繋がったと語る高橋さん

価格.com - 確かに、「走行中でもよく聞こえる」という意見は多かったように思います。

高橋さん - もちろん基本的な音質設計はしっかりやっていますし、今回ハイレゾ対応ということで、いろいろな部分をチューニングしたのですが、それが全体的にいい方向に出たのかもしれませんね。

渋谷さん - 「ハイレゾ」というのはひとつの切り口ではありましたが、私たちは、グループ会社でビクターエンタテインメントなどもありますように、音源の制作部分から、スピーカーのような最終的に音が出る部分まで、つまり音の入口から出口まで一貫した技術を持っています。

今回のモデルも、旧日本ビクター(JVC)と旧ケンウッドの両方の技術が融合してできあがった部分があるのですが、それが結果的にはハイレゾだけでなく、ユーザーレビューにもあったように、CDや圧縮音源などでもこれまでとは次元の異なる音の再現性につながったのだと思います。顔は同じでも、中身は全然新しくなっていますので。

価格.com - これまでも「音」に対してはこだわってきたケンウッドのカーナビですが、ここへ来て一般のユーザーさんにも認知が広がったように思います。そこには、10万円クラスの普及価格帯でありながら、そのクラスを超えたコストパフォーマンスの高さというものもあったように思います。

渋谷さん - もちろんコストをかければいいものはできるわけですが、比較的お求めやすい金額でお届けするという前提で最高のものを作ろうとしています。

舟見さん - 渋谷のほうからも「お金をかけずに品質を上げろ」ということを言われてますので(笑)。我々技術のほうでも大変苦労する点ではありますが、当然お金をかければいいものはできますが、そこをいかに抑えていいものを作るかという点では、これまでのノウハウが生きてきます。

本当に細かなチューニングなどを積み重ねて音質を上げていく。今回もハイレゾの高精細な音源の特性を生かすために、電源部分のノイズを極力抑えるなどの工夫をしました。その結果、ハイレゾ以外の音源での音質も上がるという結果に結びついたのだと思います。

細かなチューニングなどを積み重ねることで音質が上がると語る舟見さん

細かなチューニングなどを積み重ねることで音質が上がると語る舟見さん

価格.com - 音以外の部分に目を向けると、「彩速ナビ」の名前の「速」にもあるような高速レスポンスや、スクロールの速さ、タッチ操作のよさも、非常に評価が高い部分ですね。このあたりのこだわりをお聞かせいただけますか。

渋谷さん - 全般的に言えることですが、車に乗っているとストレスがかかってきます。そういう意味で、カーナビは快適な運転環境を作るために、ストレスを軽減してもいいけれど、逆にストレスを作ってしまってはいけない。ですので、スピードというのは大事だと思っています。

2011年に「彩速ナビ」の初号機を発売したときには、世の中のカーナビはほとんどがHDDタイプでした。しかもデータはどんどん肥大化していて、ソフトも増えてきて、その割にはパフォーマンスが悪いという状況でした。

今から思えば、スクロールと言えるようなものではなかった。すでにスマートフォンは世の中に普及してきていましたから、スマートフォンの操作を見るたびに、「世の中はこんなに進化しているのに、なんでカーナビだけは依然としてこんな状態なんだ」と。そこから、「彩速ナビ」の企画はスタートしました。 当時はHDD全盛の時代でしたが、HDDとはもう絶縁しようということで、記録デバイスをメモリーに絞ったときに、結局、システムを全部いちから作り直そうということになりました。ですので、非常に時間をかけて作ってきたわけですが、おかげ様で、5年経った今でも「業界最速」といえるようなレスポンスとスピードを維持し続けています。

価格.com - 本当に「彩速ナビ」が出たときのスクロールの速さには驚愕した覚えがあります。逆に少し意地悪な質問をすると、ナビ機能についての評価はあまり高くありませんね。

渋谷さん - 私たちの調査では、自車位置精度などに関しても決して劣っているわけではないのですが、ルート検索などは、使う方の好みの問題もありますので、100人が100人満足できる検索結果って出せないんですよね。何となく、「ケンウッドのカーナビはAV」というイメージが一人歩きしてしまっているような部分も影響しているとは思うのですが。

また、「メニュー階層が使いにくい」などのご意見も頂戴しておりますが、こちらについても、好みが分かれる部分ではあるので、なかなかこれが正解というものが出しにくい。また、時代の状況などによっても左右されます。去年まではいいと思ったものが今年はダメだということもありますし。そうした部分は、やはり「経験」というのがものを言ってくる部分なのですが、今ちょうどそのあたりの改良に取り組んでいるところです。

価格.com - もうひとつ「彩」の部分ですが、液晶パネルの画質や色使いなどについても評価が高い部分ですね。

渋谷さん - 先ほどもお話しした、旧JVCの開発者と旧ケンウッドの開発者で言うと、ケンウッドのほうがどちらかと言えば音にうるさくて、JVCのほうがどちらかと言えば絵にうるさいという傾向があるように思います。

これは、まさに両社の育ってきた文化によるものでしょうが、車の中というのは輝度が非常に重要なんです。直射日光の眩しい光から、夜中の暗闇まで、いろんな環境下できちんと認識できなくてはいけないので、単純に輝度を上げて明るくビビッドに見せればいいというものではありません。輝度・コントラストだけではなく、階調性、表現性、再現性といった部分が重要になってきますし、そこは結構こだわっている部分ですね。

「画面表示」「AV機能」などすべての項目において高い評価を得る「彩速ナビ MDV-Z702W」

「画面表示」「AV機能」などすべての項目において高い評価を得る「彩速ナビ MDV-Z702W

価格.com - 旧JVCと旧ケンウッドの双方のDNAがいい形で融合しているというのは、面白いですね。

渋谷さん - 実はJVCとケンウッドが統合したときに、いろいろな部門があった中で一番早く両社の垣根を取り払ったのが、カー関連の部門だったんです。

それまでまったく異なる、競合同士だった人たちが一緒になるのですから、なかなかうまくいかないことは多々あったわけですが、垣根を取り払ったのが早かったので、うまく回り出すのも早かったです。「彩速ナビ」が出る頃には、もうどっちがどっちだったかわからなくなるくらい、ひとつの目標に向かって結果を出せる部署になっていました。そういった開発者1人1人のよさが、この「彩速ナビ」の成功につながっているのは確かだと思います。

価格.com - 最後に、価格.comのユーザーにメッセージをお願いします。

渋谷さん - とにかく楽しんでいただきたいと思います。車は単なる道具ではなく、楽しく時を過ごせる場所でもありますから、そのための一助になるような製品を出していきますし、今後も進化をしていきたいと思いますので、今後も弊社の製品を長くお使いいただければと思います。

舟見さん - 技術としては、自分の欲しい製品を作り上げています。機能は毎年のようにアップしていますし大変な部分もありますが、それでも自分が欲しいと思えるような製品を作り上げていきますので、ぜひ皆さんにもお使いいただければと思います。

早川さん - 本モデルのように、その音を聞いて「すごいな」と思っていただける、皆さんに感動していただけるような製品を作っていきますので、今後もぜひご期待ください。

渋谷さん - 最近、製品を出すたびに「今年はケンウッドさん、何やってくれるの?」と聞かれることが多いんです。それくらい皆さんから期待値も高まっているということを感じます。大変なんですが、ぜひその期待値を超えていきたいと思っています。

高橋さん - 毎年だと大変なんで、2年おきくらいにしませんか?(笑)

プロダクトアワード2015 カー用品部門 大賞 記念楯の贈呈

プロダクトアワード2015 カー用品部門 大賞 記念楯の贈呈

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