パナソニック株式会社 アプライアンス社
コンシューマーマーケティング ジャパン本部
スモールアプライアンス商品部
キッチン商品課 キッチン商品係 主務
中江 睦さん
中江さん - ありがとうございます。価格.comは、非常に厳しい評価をいただける場だと思っていますので、そういったところで高い評価をいただけたことは大変光栄に思っています。ユーザーの方のレビューもいろいろ見させてはいただいていますが、いろいろ厳しいご意見もある中で、あたたかいご意見もあり、すごく励みになっています。
中江さん - 一番のポイントは、やはり炊き技が非常に独創的であることかと思います。「かまど炊き」というのは、割と各社が言っているうたい文句ですが、炊き方にこだわって、かまどそのものに極限まで近づけたのは弊社だけかと思います。それを実現できたのも、パナソニックと三洋電機の両方の技術を持ち寄った合わせ技ができたからだと思いますし、「Wおどり炊き」というこの合わせ技によって、お米の甘さや美味しさをしっかり引き出せたことが、一番のポイントかなと思います。
プロダクトアワード2015 調理家電部門 大賞を受賞した「Wおどり炊き SR-SPX105」
中江さん - そうですね、そこがまさに大変だったところです。
パナソニックはIHのパイオニアですし、三洋電機は可変圧力の巨頭だったので、それが一緒になったときには、どちらの技術者も「自分のところの製品が一番美味しい」「もうこれ以上甘くできない」と思っていました。でも、さらに上を目指すにはどうしたらいいかということで、両方の技術者が集まったときに、お互いの製品で炊いたご飯を食べて、「意外といいんじゃない」とお互いに認め合ったというような話を聞いています。
三洋電機の可変圧力技術で炊いたお米の「甘さともちもち」と、元々パナソニックが持っていたスチーム技術を使った「甘さとハリ」のようなものと融合することで、より美味しいご飯が炊けるのではないかということで、そこからこの「Wおどり炊き」の開発が始まったわけですが、2つの異なる技術を現行サイズと同等の大きさにどうやって入れ込むかなど、そこからはもう血を吐くような努力をしたらしいですが(笑)。
パナソニックと三洋電機の融合により、より美味しいご飯が炊ける「Wおどり炊き」が開発されたと語る中江さん
中江さん - 確かに、「次はもっと甘く、もっと甘く」というところで開発してきていますので、大変なのは確かです。ただ、期待されているのは確かなので、さらにこの「おどり」に磨きをかけていきたいと思っています。
最終的に目指すところは、「日本人の最大公約数の方が美味しいと感じるご飯」です。甘みを軸にはしていますが、すべてのバランスが取れた、万人が美味しいと感じるご飯を作るためにはどうしたらいいかということを考えています。そのために、一番美味しい炊き方とされている「かまど炊き」を研究し、そこにいかに近づけていけるかという研究を積み重ねています。
前モデルから、この本モデル「SR-SPX105」へ改良したときには、圧力の機構を変更しています。お米の甘みを引き出すためには、圧力をもう少し強めにかけ、早く減圧することで、お米の「おどり」を強くするのが効果的だということを発見しました。そこからは、どうやってより早く圧力を減圧できるかという技術的な課題になります。従来型の圧力制御はボール状のものを穴に入れて、弁を閉じたり開けたりというアナログな方式でやっていたのを、モーターを入れたメカ式に全て替えまして、より細かい制御を可能にしました。
中江さん - そうですね。モーターを入れた後も、どれだけの強さで減圧したら、お米がつぶれずにおどるかという部分の調整が非常に難しかったです。あまりやりすぎてしまうと、お米同士がぶつかってつぶれてしまいますし、最適な減圧具合を見つけて、調整していくという部分が難しかったところですね。
中江さん - お米の炊き方でよく言われるのが「はじめチョロチョロ、中パッパ」という言葉がありますが、最後のほうに「ひと握りの藁燃やし」というタイミングがあるんですね。要は、最後にグッと火力を上げて、水分をババッと飛ばして焼き切る、という工程なんですが、これがすごく甘みのポイントになってくるんです。この効果を実現するために、220℃という高温のスチームで表面を焼き切るんですが、その結果として、お米の表面にパリッとしたようなコーティングがなされ、粒立ちがよく、ハリのいいご飯に炊きあがるんです。
中江さん - 弊社には、「ライスレディ」という女性だけの部隊がありまして、全国のお米を取り寄せて炊飯器のソフトを開発しています。ときには地方を訪れて、いろんな方にヒアリングなども行っているのですが、そこで聞いた話をまとめると、やはり炊き上がりの好みというのは、地域や人によって千差万別だということがわかってきました。
そこで、より自分好みの炊き方にできるようにいうことで、この機能を開発しています。幸い、この製品には、IHスチームや可変圧力など、さまざまな機能が入っていますので、それらを微妙に調整していくことで、いろんな炊き方が可能になりました。たとえば、「しゃっきり」の上に「よりしゃっきり」、「もちもち」の上に「よりもちもち」といった具合に、全部で9通りの炊き分けができますので、自分の好みに合わせて使っていただければと思います。
より自分好みの炊き方にできる「銀シャリ9種類炊き分け」機能を搭載する
中江さん - はい。店頭などでも、お客様がどれを買ったらいいのか迷った際には、「いろんな炊き分けができるこの製品を買っておけば間違いがないですよ」というようなセールストークにもつなげられるということで、営業的にも好評の機能です(笑)。
中江さん - 三洋電機時代からのファンの方も一定数いるというのはひとつベースとしてあると思います。
それに加えて、「Wおどり炊き」になってからは、この美味しさをより知ってもらうという活動に注力していまして、2013年からは、1台の車に炊飯器のセットを入れて、試食してもらうために全国を回るというキャラバン活動をしてきました。この活動を通して、全国30万人の方に「Wおどり炊き」で炊いたお米を食べていただいたんですが、この圧倒的なサンプルというのが、徐々に効いてきた部分もあるかもしれません。
やはり、実際に食べてみないと、なかなかその価値はわかりませんので。
中江さん - そうですね。ただ最初にこれを導入する際には、社内でもかなり物議をかもしまして(笑)、最後まで賛否両論で大変だったんですが、結果としてはかなり好評でして、白よりもこの赤黒のタイプのほうが売れています。高級感があるということで、男性だけでなく女性にも広く受け入れられていますね。
高級感のある赤を基調としたなスタイリッシュなカラーが人気
中江さん - 価格.comの掲示板でも、さまざまな意見をいただいていますが、いい意見も悪い意見もどちらも非常に参考にしております。開発のメンバーにとっても励みになっていますので、今後も忌憚なき意見をお聞かせいただければと思います。
また、ぜひ実際にこの「Wおどり炊き」のよさやお米の甘さを体験していただければと思いますので、ぜひイベントなどの際はお試しいただければと思っています。高級炊飯器市場を作ってきたという自負もありますので、今後もさらに磨きをかけていきます。ぜひご期待ください。
プロダクトアワード2015 調理家電部門 大賞 記念楯の贈呈
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