マツダ株式会社
商品本部
主査
冨山 道雄さん
冨山さん - 2011年くらいから新たな小型車の企画を始めていましたが、その頃言われていたのは、お客様のニーズが非常に多様化しているということでした。
多様な趣味を持たれていて、既存の小型車では飽き足らないというような層です。こうしたお客様を「デミオ」だけでカバーするのは無理がありましたので、もうひとつ「クロスオーバー」というラインアップを持つことで、お客様の層を広げていこうということで企画が始まりました。
ただ、この「小型車のクロスオーバー」という新しいジャンルの車が、2011年当時、市場に受け入れられるかどうかはまったくわかりませんでしたし、収益的な面もしっかり押さえていかなくてはいけなかったので、「デミオ」や「アクセラ」との共用化をうまく活用しながら、クロスオーバーの性格付けをしていったのが「CX-3」の成り立ちになります。

プロダクトアワード2015 自動車部門 大賞を受賞した「CX-3」
冨山さん - 私たちは「CX-3」を「CX-5」の弟分というようにはまったく考えていません。
「CX-3」は、「コンパクトクロスオーバーでありながら、Cセグメントの価格帯でしっかり勝負できる上質さを持った新しいクロスオーバー」というコンセプトで作られた車であって、決して「CX-5」の小型版というわけではないのです。

「CX-3」には独自のコンセプトがあると語る冨山さん
ですから、SUVの「CX-5」とは違った嗜好性を持たれたお客様に選んでいただきたい。洗練されたデザインとパッケージングを実現するとともに、都市生活でのフレキシビリティを高めるために取り回しのしやすい車両サイズにこだわりました。特に車高も1550mmに抑えるといったところを優先順位として開発してきました。
「CX-3」の企画の途中で「CX-5」が世に出て高く評価され、ディーゼル車の比率も高まってきたことがわかり、生産台数なども上げたわけですが、最終的には、上がってきた「CX-3」のデザインを見て「これは売れる!」と社内全体が自信を持ちましたね。

プロダクトアワード2012で大賞を受賞した「SKYACTIV-D」搭載のSUV「CX-5」
冨山さん - 私もお客様といろいろなお話をさせていただいた時に、特に多く聞かれたのが、「ひと目惚れで購入しました。まったくほかの車種と迷いませんでした」という声です。
そういう意味でも、この「CX-3」のデザインは、「CX-5」以降、マツダが進めてきた「魂動(こどう)デザイン」の中でも、もう一段先の、新しい世界観が入ったデザインなのかなと思っています。
もちろん車のデザインは社内のデザイナーが切磋琢磨しながらよりよいものを作ろうとしているわけですが、デザイナーだけではダメです。実際の製造現場で、このクオリティで作るということをみんなが共有してくれないと、あの造形は実現し得なかったと思います。

多くのユーザーが思わずひと目惚れをするほど洗練された車体とコックピット
冨山さん - マツダの中では「共創(きょうそう)」という考え方があります。それぞれのセクションを超えて、どうやったらできるのかということをお互いに協力し合って考えていくというものです。
自分たちのセクションに多少の負荷がかかっても、全体として楽になるのであれば、そこはむしろ積極的に取り組もう。そういう風土がどんどんできてきているんですね。
なので、デザインモデルができてきたときも、役員に見せる前にまず工場の現場の担当者に見てもらって、「この車カッコいいでしょ。できないって言わないでくださいよ」と、この造形で作りたいんだということを説明したりしました。
マツダでは、開発の初期の段階から、後工程の人にも一緒にチームに加わってもらって、どうやったらできるのか、ということを考えています。そこが小さな会社のいいところなんです。みんな広島の同じ場所で仕事してますから、誰かが声をかければ1時間以内にみんな集まることができる。そこで、解決策を見いだしながら合意形成をし、さらに次の課題に取り組んでいくという流れができています。
プレスの限界とか樹脂の成形の薄さの限界とか、随所にそういうものが入っていますが、特に「CX-3」については、デザインとしてもいろいろ新しいチャレンジをすることができたと思います。

「共創」という考え方のもと切磋琢磨しながら生み出されたCX-3のデザイン
冨山さん - ディーゼルエンジンに関して言えば、「CX-5」の発売当初は、まさかここまでディーゼル比率が上がるとは思っていませんでした。
ディーゼルエンジンは、特有の「汚い、臭い、うるさい」という課題を技術的にブレイクスルーできるかどうかが重要だったわけで、その過程ではいろいろ苦労もしました。いろいろなものを付け加えて解決しようとすると、コストがかさんで、結果的にハイブリッドエンジンよりも高いものになってしまいます。
ただ、私たちの場合は、ベースにある「燃焼をしっかり行う」ということにフォーカスして、追加のデバイスなしに性能をブレイクスルーすることができた。ここが、私たち固有の技術であり、それに対する自信にもなっています。そういうものがあったからこそ、ハイブリッドエンジンという強い個性に対する、もうひとつの選択肢ということで、ご提供することができたのです。

クリーンディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D」
冨山さん - そうですね。今やマツダの乗用車のラインアップの中でも、半分以上がディーゼルですから。
今ディーゼルエンジンをお選びいただいている方のほとんどは、ディーゼル経験がないと思います。それが初めてディーゼルに乗られてみると、その圧倒的なトルク感などを新しいフィーリングで捉えていただける。
で、皆さんが驚かれるのは一回目の給油時です。燃費がいいので、一回目の給油までの時間が非常に延びるのと、軽油の価格の安さもあって、皆さんガソリンエンジンから乗り換えられると「燃料費が半分になった」と言われます。
冨山さん - やはり、ガソリンエンジンに比べて2クラス上くらいのトルクを持っていますので、見た目の車格以上の運転フィーリングをお感じいただけているのではないかと思います。

見た目の車格以上に運転フィーリングの高さが光る
冨山さん - はい。私も価格.comのクチコミは定期的に見させていただいていまして、いろいろなご指摘をいただいているのは認識しています。
皆さん本当にしっかり勉強されていますし、高い評価の感度を持たれていると思います。私たちとしても、まだやり残している部分があると受け止めさせていただき、ネガティブな部分を今度は強みに変えていこうということでやってきました。ですので、今回の新モデルも、「狭い」というご指摘に対してはどうしようもないのですが、ほかのご指摘に対しては、できることを順番に解決していこうということで取り組んでいます。
なかには時間がかかるものもありますが、今のタイミングでできることを、とにかくみんなに急いでやってもらったというのが、今回の改良モデルになります。

クチコミなどで得られた意見も順番に組み込まれていく改良モデル
冨山さん - 先ほども申し上げた「共創」という考えのもと、常に現在の課題を解決すべく議論を行っていますし、価格.comのクチコミも注意深く見させていただきながら、お客様から何を期待されているかということを理解しつつ、それがいつできるのかということを、そのときの技術の進化と合わせながら常に考えています。
今回の改良モデルに関しても、たまたまいいタイミングで、できあがってきた技術があったので、それを無理を言って間に合わせてもらったような形です。発売後1年で、ここまでの改良がなされることはあまりないかもしれませんが、こうした改良はいち早くお客様にお届けしたいということで取り組んできました。
冨山さん - 私たちは、単にA地点からB地点までを機械任せで移動するための自動運転の車を作るつもりはまったくありません。同じ自動運転の要素技術を使って、お客様の運転を支援するという車は作っていこうと考えており、手放しで目的地まで着くという車は作る考えはありません。
私たちは世界シェアで見たらたかが2%の会社ですから、走る歓びを全ての皆様にご提供するという私たちの車作りを支持していただけるようなお客様に対して、あくまでも人間中心、運転する楽しさを提供できるような車を作っていきます。
冨山さん - 「CX-3」は新しいジャンルの車ということで出した車ですが、さまざまなご評価をいただきました。私たちとしても非常に手応えを感じております。
この12月に改良モデルを出したように、常にいろんな改良を加えながらお客様の満足度を上げていき、マツダブランドに対する信頼度が上げられるように取り組んでいきたいと思っていますので、今後のマツダにも期待していただきたいと思います。

プロダクトアワード2015 自動車部門 大賞 記念楯の贈呈
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