ソリオのライバルであるルーミーを筆頭とするトヨタ系トールワゴン軍団(トヨタ:ルーミー/タンク、ダイハツ:トール、スバル:ジャスティ)のタンクに乗ってきました。今回はこれより前に乗ったソリオとの比較レビューをしてみたいと思います。
トヨタレンタカーでお借りしました。走行距離88000kmの個体でした。新車の頃から随分と走り続けてるのかな。
【エクステリア】
ソリオより存在感のある感じは◯。ソリオは大人し過ぎる。かと言って、近頃よくある押し出しが強過ぎるデザインということもなく、ダイハツはこの辺りをよくわきまえていると見た。
【インテリア】
下位グレードということで最低限の装
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備しか着いていないこともあって、とっても安っぽい。エアコンのダイヤルスイッチのデザインなんか20年ぐらい前のものみたい。シートもフニャフニャで長時間座っていようとは思えない。単眼メーターは視認性はいいが、好きではない。お願いだから着けてくれよ、タコメーター。
ただ、悪いことばかりでもない。室内はそこそこ広い。天井までの高さもそこそこ感じた。フロントウィンドーの視認性も良く、実際運転しても周りがよく見えた。
ただ、インテリアの質感はソリオも他人のことは言えないものだったので、ここは五分か。
【エンジン性能】
これが大問題。このクルマに搭載されているのは、1L3気筒の1KR-FE。2004年の初代パッソから続き、今もヤリスやパッソに搭載されている伝統の(?)エンジン。たかだか70馬力と10kg-mにも満たないトルクという、ほぼ軽自動車並みのスペックの為、車重910kgのパッソでさえ流れに乗るのがやっと。
ところが、このタンクときたら何と車重がパッソから更にデブエットをしたか、1070kgになってしまっているのだ。さあ、アクセルを踏んだらどうなるか…!?…遅え…。まるで、いい歳こいた兄が小さな弟の三輪車に無理やり乗り込んだような気分。「♪盗んだバイクで走り出す…♪」…違うな。
脱線したが、とにかくこのエンジンではダメだ。せめてカスタムに設定されているターボか、トヨタ製の別のエンジンが欲しい。ソリオの1.2Lエンジンはちゃんと加速するので、これはタンクの惨敗と言わざるを得ない。
【走行性能】
これもソリオに比べても良くない。まず、ボディ剛性がなく、ハイトワゴン故の重心の高さも災いして、安定感がない。重心の高さはともかくとして、もう少し剛性あってもいいんじゃないの?
サスペンションも剛性がなく、フニャフニャ。コーナーはみんなロールアンダー、ピッチングも大きい。プアなタイヤ(165/65R14)のせいもあってか、接地感は皆無に近い。しかもあろうことか乗った日は雨。まるで水の上を走っている(滑っている?)感覚で、正直怖かった。
【乗り心地】
これも良くない。フニャフニャのサスペンションとハイトワゴンの重心の高さもあり、コーナリング時のロール感が不快。揺り返しもいやに早い。これで長時間は無理だ。ソリオの方がまだマシ。タンクじゃ酔っちゃう。
【燃費】
15km/L台と良くなかった。何せ基本設計が20年近く前のエンジンだ。燃費技術が研究された最新のエンジンには敵わない。1KRの使い回しがいい加減もう潮時であることの暗示だろう。ちなみに、ソリオも燃費は同じぐらいだったので、ここは2台とも頑張って。
【価格】
高い。この場合の高いというのは、単に価格ではない。コスパが低いという意味だ。正直この価格に対するパッケージで見た時にショボい。ただ、本音を言ってしまうと、エンジン以外ならソリオもどんぐりの背比べ状態だ。これなら同じ価格でもN-BOXのような良く出来た軽ハイトワゴンの方が断然いい。
【総評】
今回はソリオとの比較をしながらタンクに乗ってみた訳だが、正直これには買う価値を見出せない。その理由は全てにおける質感の低さだ。今回乗った個体が下位グレードだったこともあるのだろうが、これが上位グレードになってどのぐらい質感は向上するのか。いや、向上は望めないだろう。
よくカタログなんかを見ると、メッキなんかを使って「質感あるでしょ?」なんてバカのひとつ覚えみたいにぬかしてるのがあるが、タンクも例外ではない。まさにそういうやり方で売ってるクルマだからだ。だが、そんなのは質感とは言わない。質感とは、滑らかに余裕ある加速をするエンジンとか、乗り心地の良いサスペンションとかそういうのを言うのだ。カッコじゃない。
今回、タンクがソリオに負けた理由はそこだ。スズキが考える質感は正解だ。エンジンはちゃんと加速するし、サスペンションも柔らかいことには柔らかいが、タンクほどグニャッとはしていない。
そんなソリオは昨年末にモデルチェンジし、変わらぬ時期にこちらもマイナーチェンジした。しかし、タンクはルーミーに一本化されてなくなってしまった。これはソリオに対する実質の負けにほかならない。マイチェンしたルーミーはタンクの分まで一挙に背負い、ソリオ撃墜を任された。これが進化したソリオにどこまで追いつけるかが今後気になるところだ。僕はこの2台の販売競争を、2台の車名の頭文字を取ってRS戦争と呼ぶことにしよう。